今年の7月は歴史的な暑さでした。皆様、十分な睡眠と水分の補給を忘れずにこの夏を乗り切ってください。

 

さて、歯の解剖学において世界で最初に詳細に研究されたのたは Prof.Walter Hess 1885-1980によるものでした。

 

 

 

 

根管の中は枝分かれしていてこんなに複雑な構造をしています。

 

歯の内部が虫歯などで細菌感染が起きるとこの根管内を洗浄・消毒して無菌化しなければなりません。

 

これが出来ないと歯の内部ではなく歯の周囲の組織に感染が波及して根の先に膿がたまり、更には全身にも影響を与えるので根管治療は非常に重要な治療です。

 

機械的拡大に限界がある

通常、歯科医師は根管内をファイルをいう器具を使って拡大して洗浄液(次亜塩素酸ナトリウム溶液)が根管内に到達するような治療を行います。

 

しかしながら、余りにも大きく、太く拡大すると歯に穴を開けてしまう穿孔・パーホレーションを起こします。

また、大きく拡大すると一時的に治癒したとしても経年的に歯根破折を起こす可能性も大きくなります。

 

下の図のようにニッケルチタンのファイルで根管形成をしても根管内の汚物、デブリはかなり取り残すというデータがあります。

 

赤の部分は拡大されてファイルが届いた部分、緑は拡大されずに取り残されています。

 

根管洗浄を行っても根管洗浄剤は細部は到達しない

研究によると、根の先の部分での拡大のサイズは#35(350μm)くらいであれば洗浄液が到達するとされています。

それ以下のサイズでは気泡(Vapor Lock)により、洗浄液の根尖への到達を阻害してしまう可能性がある。

 

写真は「歯内療法の迷信と真実」牛窪先生、山本信一先生、神戸良先生著より

 

 

この事実から根管の細い狭いところまで拡大は出来ないので洗浄液は到達出来ないという結論が導かれます。

 

超音波を用いた根管洗浄の有効性

通常、超音波を用いた根管洗浄は複雑な細かい根管イスムスやフィンなどの回転切削器具では同心円状の形成しか出来ないため、拡大形成の効果が及ばない根管壁面にも効果的に洗浄できるとされている。

 

 

当医院でもアメリカから輸入してPiezo Flowという器具を使って根管の細いところまで超音波の力で洗浄液を届かす努力をしています。シリンジによる洗浄だけでは無理です。超音波を使っても根尖近くの分技・吻合・イスムス・フィンには洗浄液は届きません。

私たちはエルビウムヤグレーザーを使用した根管洗浄も行っています

最近はレーザーによる根管洗浄も注目されています。

 

根管治療において, リーマー・ファイルな どを用いた機械的拡大には限界があり, 器具 が接触しない領域の存在が指摘されています。

 

さらに, 根尖近くには分岐・吻合・イスムス・ フィンなど複雑な解剖学的構造が存在していて根管壁に形成されたスミヤー層 (根管を機械的に拡大する時に根管壁と器具の接触部に生じる有機物,無機物,壊死物 質,微生物などから成る層)を除去することに加えて, これらの領域に残 存する細菌を含む感染物質をできるだけに取り除 くことは根管治療の成功率を高める上で重要 です。

 

Er:Yag レーザーはこれらの複雑な解剖学的構造物の感染物質を除去できる可能性があります。

 

 

吉川英樹 拝