歯周ポケットの潰瘍面形成と全身疾患との関係

細菌の塊を押し付けられる歯周ポケットの傷口

こんなことを想像してみて下さい。例えば、皆様の体の表面に9cmX8cmの傷口がありまして、そこの潰瘍面には真っ赤な出血があります。実は歯周ポケットというものはこのようになっているのです。もしも、すべての歯の周りに5mmの歯周ポケットが存在すると仮定すると、その潰瘍の面積は72cm2=9cmX8cmと言われています。これは手のひらのサイズと一致します。この大きな傷口に歯垢という細菌の塊が常に押し付けられているのです。

傷口にウンチをいつも押し付けられているのですよ。体に良いわけはありません。

歯周ポケットの出血を止めて全身疾患を防ぐ

細菌の塊が潰瘍という傷口に接触することによりサイトカインの嵐というような激しい免疫反応が激しくなります。細菌が潰瘍面から体の中に入ることによって、体の防御反応が起こるのです。

歯周組織で産生されたサイトカインは血流に乗って全身に運ばれて、様々な臓器、組織で炎症をおこすようになります。

また、ポケット内の歯垢の中にある歯周病菌は血流に乗って全身に運ばれます。この現象を菌血症と言います。

歯周病によって引き起こされる菌血症はやっかいなもので、歯石除去や抜歯、毎日の歯磨きや食事によっても引き起こされます。

このような菌血症が歯周病によって引き起こされる全身の病気の正体です。

日本歯周病学会歯周病専門医　吉川英樹執筆