前歯が虫歯になった時は歯と同じ色の詰め物をすることが一般的ですが、稀に歯と詰め物の間に隙間があるとそこから漏れが起こり細菌が歯の中に侵入して、根の先に病巣・膿がたまることがあります。レントゲン写真です。

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それでは、何故、隙間・漏れがある充填物(コンポジットレジンと言います)を入れるのでしょうか?術者が原理原則を守らないとこのようになるのかと思います。

どこでも行われるコンポジットレジン充填は意外にもテクニックが必要な治療法で
1 唾液は絶対に混ざってはいけません。
2 歯を削ると象牙質という組織が出現するが象牙質は生きているので、そこに接着させなくてはならず削りかすがそこに残っていれば接着を阻害しますので象牙質をクリーンにして象牙細管を露出させなければなりません。そのため、プライマー処理は20秒間行う必要があります。
3 コンポジットレジンを充填する時に歯との界面に空気が侵入してはいけませんので、流れの良いフロアブルレジンが必要です。
4 コンポジットレジンは2%程収縮するので少しずつ積層しながら光重合(光で固める)すること。
5 光重合の器械の先端が汚れていたり、器械自体が劣化しているとコンポジットレジンが硬化しないことになりますので器械をベストな状態にしてチェックを怠らないことが重要になります。

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人間の体の外側、空気に触れている部分の皮膚に傷を負い、体の内部が露出すると上皮が1日に0.5mm伸びてきて、いつの間にか傷は覆われ塞がってしまいます。虫歯が出来て歯が削られると、そこは体の中が露出したことになります。歯は自然に上皮が出来て塞がるということはないので私たち歯科医師が人工的にそこを塞がなくてはなりません。細菌が隙間から歯の中(体の中)に侵入しないように精度の高い、隙間のない詰め物をしなければなりません。

歯の治療をするということは体の中を保護して全身の健康状態を守るということなのです。

日本歯周病学会 吉川英樹 拝