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毎日、歯科の仕事をして、患者さんのお口の中を見ているとなぜか空しくやるせない気持ちになることがあります。

 

すっぱいレモンが患者さんのお口の中に多くはびこっているからです。

 

甘いレモンではなくすっぱいレモンがお口の中にはびこっているのは、真っ黒い銀歯がお口の中にはびこっていることです。

 

レモンには酸っぱい不出来なものが多く食べて見るまで美味しいレモンかまずい不出来なものか解らないそうでこれをレモン市場というそうです。

 

歯科市場も患者さんには良し悪しが解らないことが多いので、本当に価値がある治療を受けられる割合は相当少ないということの例えです。

 

 

レモン市場
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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経済学において、レモン市場 (lemon market) とは、財やサービスの品質が買い手にとって未知であるために、不良品ばかりが出回ってしまう市場のことである。
レモンとは、アメリカの俗語で質の悪い中古車を意味しており、中古車のように実際に購入してみなければ、真の品質を知ることができない財が取引されている市場を、レモン市場と呼ぶ(レモンには、英語で「良くない」「うまくいかない」等の意味があることから、転じて「欠陥品」「品行が悪い(女性)」事を指すようになった)。レモン市場の問題 [編集]レモン市場では、売り手は取引する財の品質をよく知っているが、買い手は財を購入するまでその財の品質を知ることはできない(情報の非対称性が存在する)。そのため、売り手は買い手の無知につけ込んで、悪質な財(レモン)を良質な財と称して販売する危険性が発生するため、買い手は良質な財を購入したがらなくなり、結果的に市場に出回る財はレモンばかりになってしまうという問題が発生する。

 

 

具体的な例を挙げて説明しよう。いま市場には、高品質の財と低品質の財が、それぞれ半々の割合で存在しているとする。売られている財の品質を熟知している売り手は、高品質の財は300,000ドル以上、低品質の財は100,000ドル以上ならば販売してもよいと考えているとする。

 

 

しかし買い手にとっては、売られている財の正しい品質を判断することは困難であるため、買い手は半分の確率で財が低品質であると考える必要がある。そのため買い手にとっての財の価値は、高品質な場合の300,000ドルと低品質な場合の100,000ドルの平均である200,000ドルとなる。したがって、買い手は200,000ドル以上は支払いたくないということになる。

 

このことを予想する売り手は、200,000ドルより高い財を市場に出すことを諦め、それ以下の財だけが取引されるようになる。これによって、今度は買い手が支払ってもよいとする平均価格も150,000ドルまで低下し、売り手は150,000ドル以上の財を市場に出すことを諦める。

 

結果、売り手は高品質の財を売ることができず、低品質の財ばかりが市場に出回る結果となり、社会全体の厚生が低下してしまう。このような現象は、逆選抜と呼ばれる。

 

フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』より引用いたしましたが如何でしょうか?

 

 

私には、正に歯科医療はレモン市場・中古車市場に似ていて悪医が良医を駆逐するように感じます。

口の中は患者さんにとって見えにくいのでとにかく治療の質は解りにくく良い治療か悪い治療かの判断がつきにくいものです。

そのためこんな光景を目にします。

歯科ユニット(患者さんが座る椅子)の周りを歯科医が忙しそうに飛び回りながら、複数の患者さんを同時進行で治療をする。

 

 

日本の保険診療は余りにも安く、治療の質が問われないことを良いことに一日の患者数を限界を超えた30名近くのアポイントを取り、待合室の玄関は靴であふれて混雑して、歯科医師も患者さんもそれが普通であたりまえだと思っている異常な仕組みができあがってくる。

 

 

このような異常な診療形態を長年続けていると、いざという時、患者さんが本当に困って
「歯で苦労するのはもうこりごりです。出来るだけ長持ちのする良い治療をして下さい」と歯科医師に仰った時に、いくら時間をかけても良いものを作れなくなってしまいます。

 

 

回転ずしに行って一貫、一万円のマグロを下さいといっても無理だし、大量販売する家具屋さんへ行って、総無垢のオーダー家具を作って下さいと言っても無理な話です。

 

歯科医療も同様に、日頃から丁寧な時間をかけた精度の高い高品質な治療を心がけていないと、金属だけセラミックだけ保険以外の材料を使っているけれど中身・精度・品質はいつものお粗末のままという自由診療になってしまいます。

 

日頃から丁寧な時間をかけた治療を繰り返し行っていると技術も上がり、洗練されて高いレベルの歯科医療を組み立てることが出来ます。

 

しかし、残念なことに一日に診療出来る患者さんのい数はかなり限られ回転率は落ちてしまいます。

 

 

患者さんにとってこのように一日の患者数を絞って歯科医師1人あたり7人程度の歯科医院であれば安心して任せて良いと思いますが、ここで考えて戴きたいことはこのような諸外国では当たり前の患者数も日本の保険診療では無効だということです。

 

歯科医院がつぶれてしまいます。

 

 

患者さんの口の中にレモンがはびこる理由はこんなことだと思いました。

 

日本歯周病学会歯周病専門医 吉川英樹 拝