車で道路を走っていると、とんでもない高い橋を通過することがあり、まるで空の上を飛んでいるような錯覚を覚えます。このような高い橋、レインボーブリッジ、横浜ベイブリッジなどは橋が地震で落っこちないのか不安になりますね。

 

 

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先日、Yブリッジ(橋を作る会社)の方がメインテナンスで来院され面白い話をしてくれました。

 

「橋の溶接にも顕微鏡が必要なんですよ。精度が悪いと溶接がうまくいかないので橋が落っこちてしまうのです。継ぎ目が精密に適合しているか顕微鏡を使って検査をしています。歯医者さんと同じですね。」

 

なるほど、橋の溶接も精度が重要なのですね。サッカーでもパスの精度が悪いと相手にボールを取られてしまいます。橋を作るのも精度が悪いと大変なことになる。歯科の治療には精度の高い治療をすることの意味は成功率、歯を長持ちさせるために必要なことは何度も繰り返しているのでご存知かと思います。

 

最近、インプラントのフルマウスケースが2症例、連続してありました。フルマウスとは総入れ歯の患者さんにインプラントですべて補綴するという症例のことです。従来はばらばらに製作したものを口腔内でインデックスを取り、口腔内で合わせたものをロー着という手法で金で繋いで製作していましたが、このことは技工操作がとてつもなく難しく完全な適合を得ることはとても困難でありました。もの凄く技術の優れている技工士さんでしか製作は難しいのです。

 

しかしながら、最近はCAD/CAMを使ったインプラント上部構造が登場してきました。

 

歯科用CAD/CAMとは Wikipediaより抜粋

歯科治療の際に口腔内に装着される修復物や補綴物(インレー、部分被覆冠、全部被覆冠、ブリッジ、部分床義歯、全部床義歯、インプラント上部構造など)は、そのほとんどが、手作業により製作されてきた。その製作工程(設計や加工)の一部をコンピュータ制御の機器に置き換える一連のシステム。これにより、作業の効率化がはかられ、品質のバラツキを抑えることが可能となり、また、従来は利用できなかった材料の利用を可能にするといったメリットがある。

 

1本の歯冠形状が10mm四方程度、歯列全体でみても100mm四方程度のワークエリアに対し、1〜10μ程度の計測・加工精度を要求するのに適した技術は産業界では意外と少なく、当初は満足のいく精度とコストパフォーマンスを確保することが難しかった。このため、しばらくの間は思ったほどには普及が進まなかったが、近年、ジルコニアセラミックスの開発・普及にともない、この材料がCAD/CAMシステムの利用をほぼ必須としていること、コンピュータの性能が向上してパソコンのレベルで3次元の立体を自在に扱えるようになったこと、などにより急速に普及し始めて現在に至っている。

 

上顎のフルマウスのケースは精度的に1〜10μの誤差で仕上げることは従来の方法では困難なために、私が担当した患者様のケースではCAD/CAMを使用したジルコニアのインプラントブリッジを選択しました。

 

従来の方法では口腔内と歯列模型が多少寸法が異なっていることは材料の性質で仕方のないことですので、それを補正するために金を使ったロー着という方法で補っていましたが、CAD/CAMでは模型が正確に歯列模型とジャストに一致していなければなりません。ベリフィケーションジグというものを作製して、最初の段階で口腔内と模型が一致していることを確認しなければなりません。

 

しかしながら、このこと(口腔内と石膏模型がジャストに一致していること)は非常に難しいことなのです。なぜならば、型を採る印象材は収縮し、石膏は膨張するのです。

 

歯科技工という技術はとても難しいものなのです。まともに適合するためには人の英知がつまっています。

 

毎日顕微鏡を使いこなし治療していて本当に良かったです。いざという時に手が動いてくれます。顕微鏡がなかったら1〜10μの識別はできないから。

 

ICOI国際インプラント学会インプラントfellowship 吉川英樹 拝