今年の初春は寒い日が多く冬のような天気が続いていましたがやっと春らしい気温に戻ってきて過ごしやすい季節になりました。暖かくなっただけで気持ちがうきうきしますね。

 

先日、初診で見えた患者さんですが3年前に根管を開放してそのままの状態で経過してお見えになりました。

 

患者さんには許可をいただいて掲載しています。根管開放されて3年後の写真。

3年間の長期にわたり根管を開放してしまうと予後は明らかに悪くなります。残念ながら見通しは明るくはありません。

 

日本では患者さんの痛みをすこしでも軽減しようと根管開放という手段を使う歯科医師が多いです。(欧米ではこのような開放する処置は禁忌とされています)

 

根管開放療法とは歯の根の先に膿が溜まっている場合、あえてフタをせず歯に穴を開けたままの状態で次の診察まで置いておき、膿が出ていないのを確認してからフタをする治療法です。

根の先に膿が溜まるとその膿はどこかに出ようとして内圧が高まり周りの組織を圧迫します。

そうすると非常に痛みを感じるので歯に穴を開けて内圧を弱めて排膿させる療法です。

 

患者さんにしてみれば排膿して内圧が弱くなるので一気に楽になるので歯科医も患者さんの痛みの緩和を目的として根管を開放するのでしょう。

 

しかしながら、この療法は注意が必要です。根管が外の世界に露出されるので口腔内の細菌が歯の中に侵入してきます。

長期間根管を開放した場合、予後が悪いのは明らかです。

 

アメリカ歯内療法学会,AAEでは根管開放についてこのように記載しています。

 

 

 

翌日までなら開放して良いと書いてありますが個人的には危険な治療法だと思います。

アメリカの歯内療法専門医の先生からは行ってはいけない治療法だと言われました。

 

根管を開放されて3年後のデンタルX線写真

 

 

3Dの画像です。

 

 

やはり相当のダメージを負っています。根尖部の骨がピンポン玉くらいなくなっています。

 

私は最近、患者さんに歯科治療の意味についてお話しすることがあります。

体の内部に細菌が侵入すると必ず炎症反応が起こります。炎症反応とは体の防御反応なので細菌と白血球の戦いが局所で起こります。その結果白血球の死骸である膿が局所で溜まります。上のレントゲンでは炎症の結果、局所の骨がピンポン玉の大きさで失われました。

 

歯科治療の意義は体の中に細菌を侵入させないことに尽きます。

ぴったりとミクロンレベルの適合で詰め物・被せものを装着することにより体の内部つまり歯の中に細菌の侵入を防ぐのです。

 

残念ながらこちらの患者さんは抜歯してブリッジという治療法を取るようになるでしょう。

 

抜歯をして原因が除去されれば骨は自然に再生されると思います。

 

このように根管治療の中断は抜歯に至りますのでご注意ください。

 

 

 

吉川英樹 拝